太郎と美林の出会い
原 嘉和
太郎は初夏のある朝、寝覚の床に住んでいる一匹の亀が、可愛いい花の蕾をくわえているのを見つけました。
蕾からはほんのりとよい香りがしました。
太郎は川上に行けば、この花が咲いているに違いないと探しに出かけることにしました。
木曽川から小川に入り、焼笹、五枚修羅、姫淵を過ぎて赤沢橋にさしかかると、ヒノキの木立に乙女の歌声が流れてきました。
オオヤマレンゲのふるさとは
オオヤマレンゲのふるさとは
奥千本の森のなか
呑雲淵で花咲かす
歌の主はここ赤沢に住んでいる美林でした。
太郎は美しい歌声と赤い頬っぺの美林に一目で気持ちを奪われてしまいました。
太郎は美林に赤沢へ来た訳を話すと蕾の花はオオヤマレンゲとわかり、お花畑に案内してもらいました。そして、可憐に咲くオオヤマレンゲの花を眺めながら、おやつに用意してきたホウ葉巻きを美林と二人で食べました。
美林はホウ葉巻きは初めてでとてもとても喜こびました。
やがて、日が傾き太郎は帰ることになりました。
美林は太郎との出会いを喜こび胸をときめかせながら、ホウ葉巻きのお礼にヒノキの香水をプレゼントしました。
二人は別れを惜しみながら、上松町で来年行われるヒノキの里の夏祭りに再会することをかたく約束しました。
秋がきて赤沢のきびしい冬が過ぎ、春から夏になると赤沢にはいつものオオヤマレンゲが咲き乱れ、上松町のヒノキの里の夏祭りが近づきました。
ここから美林の運命が開かれて行きました。